主婦の休業損害(2)休業日数、労働能力喪失率

家事労働の休業損害を計算するには、家事がどれだけできなくなっているかを%に換算して基礎収入(前回)に掛けるという計算方法をとります。計算式にすると「基礎収入×労働能力喪失率(%)×休業日数=休業損害」となります。

休業日数(請求期間)は事故日から症状固定日までで、それ以降にもなお家事への支障が残った場合には後遺障害の問題としています。請求段階で症状固定日以前までで計算している場合を除き、裁判所が症状固定日より前で休業損害の算定を打ち切った例はほぼありません。なお、「事故日から症状固定日までの期間」ではなく「通院実日数」のみを休業日数とする例も一部存在しますが少数です。

%への換算ですが、「当初2ヶ月は50%、その後2ヶ月は30%」など一定期間ごとにだんだん減らしていく方式(便宜的に階段方式と呼びます。)と、「4ヶ月間にわたって50%から0%まで減った」など一定ペースで減らしていく方式(便宜的に傾斜方式と呼びます。この場合、結局は全期間に平均の25%を掛けて計算することになります。)があります。単に表現の違いといえなくもないのですが、階段方式で判示する例が比較的多いように思います。

請求側も被請求側もどのくらいの掛率が採用されるかをもっとも気にするところですが、あまり統一的な判断がされているようには思えません。

極めて大まかにいえば、①入院期間はほぼ例外なく100%で計算されています。②通院期間の場合、通常は20から40%くらいで計算している例が多いように思われます。③通院期間で50%以上の掛率を認定する場合、兼業主婦で仕事も休止していた(この場合には50~60%くらいとする例が多い印象です)とか、サポーターを巻いていたなど客観的に運動が制限されていた、要介護認定がされていたといった特別の事情を認定している例がしばしばあります。④階段方式の場合、通院期間で80%以上の掛率を認定している例はほとんどありません。⑤後遺障害等級がついているか、ついていたとして何級であるかは考慮されていないように感じます。後遺障害等級ごとの労働能力喪失率もあまり関係ありません(例えば8級の場合でも、45%より低い喪失率を認定しています)。

個別性が高いところですし、他の争点との兼ね合いである種「調整」をしやすいところでもありますので、判断があまり統一的でないのは仕方ないところかもしれません。

請求する際に気をつけることとすれば、①示談はともかく裁判では、休業日数は症状固定日までで請求をしておいたほうがよいように思います。通院実日数のみを休業日数として請求している(掛率は大体100%としています。)例をまれに見かけますが、その場合でも裁判所は掛率を高めに見てくれるわけではなさそうです。②喪失率(掛率)をどう設定するかは難しい問題です。請求段階では全期間100%で押し通すのも一つのやり方ではありますが、実態とは明らかに違いますし、そのまま通ることもありません。一定期間を区切って逓減させる階段方式の請求も多くされていますが、裁判所は原告の設定した掛率にも期間にもほとんど注意を払っておらず、独自に認定する傾向があります。上記のような客観的に家事労働が制限されるような事情があればそこで区切って階段方式、それがなければ100%からの傾斜方式としておくのがとりあえずはベターでしょうか。