評価損の認定

評価損は格落ち損とも呼ばれ、車を修理してもなお機能や外観に欠陥が残っているか事故歴により商品価値の下落が見込まれる場合に認められるとされています。金額としてはあまり高額になることはないのですが、特に物損だけの交通事故の場合には評価損が認められるかを聞かれることが多いです。基本的に物損は実費弁償で慰謝料も原則として認められませんので、手元に残る金額があるかどうかという意味で関心が高いのかもしれません。

ただ、実際の裁判例を調べてみても評価損の認定に際しては見解が分かれているところもあります。もっとも大きな対立点は「交換修理不能な骨格部分(フレーム)に損傷があるか否かを評価損認定の前提条件とするか」でしょうか。骨格部分に損傷がないとのみ述べて評価損の発生を否定した裁判例もかなりの数存在するのですが、どちらかというと損傷が骨格部分に及んでいるかどうかは評価損を認定するときの一要素として扱っている裁判例の方が多いような印象を受けます。後者の見解では、たとえ骨格部分に損傷がなくとも以下に述べる要素(納車から日が浅い、高級車など)があれば評価損を認めることになります。

では仮に認めるとして、金額はどのような基準で決められているのでしょうか。裁判例では圧倒的多数が「修理費の何割か」という計算で金額を求めています。掛率は多くの場合1割ですが、後述のプラス要素が加われば2割になることもあります。3割以上もないわけではないですが、一般に流通していないクラシックカーのような場合が多く、かなりのレアケースといってよいでしょう。

まとめると、現在の裁判例は以下の要素を総合考慮して評価損が認められるか否か、認められるとして掛率を何%とするかを決めているものが多いと思われます。

①初度登録から事故までの期間

1週間以内の場合にはプラス要素となります。1年以内であればプラス要素にもマイナス要素にもなりませんが、それ以上期間が経過すればするほどマイナス要素は大きくなります。

②車種

外国高級車であればプラス要素となります。レクサスなどの国産高級車でもプラス要素としているものがあります。国産大衆車であることはプラスにもマイナスにも評価されないことが多いですが、マイナス評価をしているような例も少数あります。

③損傷箇所

骨格部分が損傷していないことはマイナス要素とされる場合が多いです。逆に骨格部分が損傷していることを掛率などでプラス要素とする場合もあります。

④その他

走行距離や新車価格などはあまり重視されている印象を受けません。もっとも、事故までの期間や車種などで実質的には考慮されている部分があるのでそれで足りると考えているのかもしれません。

修理費が高額かどうかも独立の要素としては重視されていません。ただ、これも車種や損傷箇所のところで実質的に重なっている部分はあります。

統一的な基準を見いだすことはなかなか難しいのですが、初度登録から1年以内の事故であればとりあえず請求しておいてもよいのではないか(ただ金額としては数万円にとどまることが多い)というのが今の私の考えです。