区分所有法の改正(3)

⑫管理組合法人の成立と解散(新法47条1項、55条2項)
管理組合法人の成立と解散についても、特別決議の分母が「出席者」(区分所有者及び議決権の過半数以上)になりました。分子は4分の3以上で変更ありません。

⑬管理組合法人による区分所有権等の取得(新法52条の2)
管理組合法人が建物並びに敷地及び付属施設の管理を行うため必要な場合には、特別決議(分母は「出席者」(区分所有者及び議決権の過半数以上)、分子は4分の3以上)により区分所有権又は敷地を取得することができるとされました。
管理組合法人に関する規定ですが、法人格のない管理組合が区分所有権を取得することも否定されていません(管理費の長期滞納者に対し、競売を申し立ててこれを取得するなど)。手続的に特別決議が必要とされたことに実際上の意味があります。なお、管理組合が区分所有権を取得した場合、その区分所有権は総会の議決権からは除外されます。

⑭使用禁止の請求、競売請求、占有者に対する引渡請求(新法58条、59条、60条)
いずれも特別決議が必要ですが、分母は「出席者」(区分所有者及び議決権の過半数以上)となりました。分子は4分の3以上で変更はありません。

⑮復旧決議(新法61条5項)
建物一部滅失(建物価格の2分の1を超えた場合)の復旧決議につき、特別決議の分母が全区分所有者から「出席者」(区分所有者及び議決権の過半数以上)に、分子が区分所有者及び議決権の4分の3以上から3分の2以上に変更されました。
変更の場合と併せ、建物が危険な状態のときは議決要件の分子が3分の2になると整理されています。

⑯建替え決議(新法62条)
決議要件の分母は従来通り全区分所有者及び全議決権で変更はありません(出席者ではありません)。しかし、(ア)地震への安全性に関する法令基準に適合しない、(イ)火災への安全性に関する法令基準に適合しない、(ウ)外壁等の剥離・落下により周辺に危害を生ずるおそれがある、(エ)給排水等の設備の損傷等により著しく衛生上有害となるおそれがあるとき、(オ)バリヤフリーに関する法令基準に適合しない、という緩和事由があれば分子は4分の3でよいとされました。この「法令基準」は法務大臣が施行までに定める予定です。

⑰建替え決議がされた場合の賃貸借の終了請求(新法64条の2)
従前は、建替え決議がされた場合でも専有部分の賃貸借は何らの影響も受けなかったため、賃借人が合意解約に応じてくれるか正当事由が認められないと退去させられないという問題がありました。
改正法では賃貸人の区分所有者等(実際上は指定を受けた開発業者になることが多いと思われます。)から賃借権の終了請求ができ、終了請求から6ヶ月の経過で賃貸借は終了するとされました。ただし終了請求があった場合には賃借人は補償金を請求でき、補償金を受け取るまでは立退きの義務を負いません。
使用貸借の場合も上記の規定が準用されますが、補償金支払の義務はありません(新法64条の3)。

⑱建物更新決議(新法64条の5)
建物の全体的なリノベーションを想定しています。従前は共用部分の変更に加え、全ての専有部分の工事を要するので全区分所有者の個別同意を得なければなりませんでしたが、緩和事由を含め建替えと同様の決議要件で可能になりました。

⑲建物敷地売却決議、建物取壊し敷地売却決議、取壊し決議(新法64条の6、7、8)
以前からマンション建替え円滑化法には要除却認定を受けた場合の敷地売却制度(同法108条)はありましたが、総会決議さえあれば可能になりました。また、選択肢も増えています。
決議要件は緩和事由も含めて建替えと同一です。賃貸借終了の規律も同じです。

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