弁護士と「交渉術」
最近は関税にしろウクライナ情勢にしろ、アメリカのトランプ大統領の動向がニュースにならない日はありません。彼が一期目の当選をしたのが私が前事務所から独立する直前の11月でしたので、自分が独立してから何年目かを考えるときはいつも赤青で塗られたアメリカの地図が頭に浮かんできます(ちなみに4年後の落選時は名古屋の裁判所で丸一日尋問をしてました)。そういう意味で私の人生にも極めて薄く関係しているといえなくもない人ではありますが、彼を語る際にはよく「交渉(ディール)」という言葉が使われます。我々弁護士にも、交渉がうまいとか交渉のプロであるというイメージを持たれている方は多いのではないでしょうか。
確かに弁護士は他人と交渉をすることが多い職業ではありますし、そういう意味で交渉に慣れているとはいえます。ただ、弁護士に交渉を依頼すると勝てる、とか通常よりよい結果が得られる、かというと必ずしもそうではないと思います。結局は相手のあることですし、相手にも自由意思がありますので、いくら「交渉術」などといって策を弄してみても無視されたり強硬に拒絶されればもはやどうにもならないというのが現実です。むしろ、無知や不慣れに乗じて不利な結果を押し付けられないようにする、というところに弁護士をつける意味があります。
バッターよりピッチャー、ストライカーよりキーパーの役目というべきでしょうか。独立して9年目になってみてそのように感じます。