区分所有法の改正(2)

前回の続きです。

⑥総会招集通知(新法35条)

総会招集通知には全ての議題につき議案の要領を付すことになりました(新法35条1項)。また、総会開催日から少なくとも1週間前の通知が要求されていましたが、この期間は規約でも短縮できないようになりました(新法35条1項ただし書き)。従来、緊急の場合には理事会の承認を得て5日までの短縮が認められていました(標準管理規約43条9項)が、改正後はできないことになります。

⑦所在等不明区分所有者の除外(新法38条の2、86条)

所在等が不明な区分所有者は、裁判所(マンションの所在地を管轄する地方裁判所)による除外決定を経ればその後の総会決議の母数から除外できるようになり、総会招集通知も不要になります。

除外決定の請求は管理者(理事長)も他の区分所有者もできますので、申立て自体に総会決議は不要と考えるべきです。ただし申立てを弁護士に依頼し、かつ管理費から弁護士費用を支出する場合にはその関係で決議が必要になることが多いと思われます。

所在等不明というためには調査が必要ですが、その程度は民法の所有者不明土地管理制度の場合とほぼ同様とされています。戸籍及び住民票の調査と、共有者など事情を知りそうな者への確認は最低限必要とされるでしょう。

除外決定は申立てればすぐ行ってくれるわけではなく、裁判の申立てがあったことなどを裁判所が公告し、その公告期間経過を経てはじめて除外決定がされます(新法86条2項)。公告期間は最低1月とされていますが、一般的に公告期間は余裕をもって設定されがちなこと、申立てから公告に至るまでの期間も要することなどを考えると、申立てから除外決定までにおおよそ3~4月くらいはかかるとみておくべきでしょう。準備期間も考慮すると総会の半年ほど前から準備を始めるくらいでちょうどよいと思われます。

⑧議決権行使者の指定(新法40条)

専有部分が共有となっている場合は、持分価格の過半数をもって議決権の行使者一人を定めることになりました。決定方法を明確にしたものと説明されています。

専有部分が共有の場合には総会までに届出が必要とされます(標準管理規約46条3項)が、これに変更はないと思われます。ただし届出は議決権の行使要件ではないので、当日でも過半数同意を得た旨の資料を提示すれば議決権行使を認めることになります。

⑨所有者不明専有部分管理命令(新法46条の2から46条の7、87条)

区分所有者の所在等が不明の場合、同人の所有する専有部分と共用部分を対象にして、裁判所が管理人を選任して管理を命ずることができます。敷地内の動産も管理の対象となります(新法46条の2第2項)。

以前はこういった場合に不在者財産管理人の選任申立をしていましたが、民法で所有者不明建物管理命令(民法264条の8)が設けられたこととの関連で、マンションでも同種の制度が作られました。申立て側のメリットとしては不在者財産管理人より予納金が安いということがいわれますが、このあたりは実際の運用をみてみないと何ともいえないところです。

⑩管理不全専有部分管理命令(新法46条の8から12、88条)

区分所有者は所在不明ではなく連絡が取れるものの、専有部分がゴミ屋敷になっているなど管理不全の場合に、裁判所が管理人を選任して管理を命ずることができます。敷地内の動産も管理の対象となります(新法46条の8第2項、46条の13第2項)。民法の管理不全建物管理命令(民法264条の14)に対応した制度となります。

所有者不明専有部分管理命令と異なり、区分所有者は連絡が取れる状態であることが前提なので管理不全専有部分管理人は総会の議決権を有しません(新法46条の9第2項)。また、管理不全専有部分管理命令の発令には原則として区分所有者の意見を聞くことになっています(新法88条3項1号)。ここで区分所有者に拒否されてしまえば実際上職務遂行が極めて難しくなるため、発令は困難なことが多いと思われます。

後述の管理不全共用部分管理命令がされた場合、ベランダなどの専用使用権部分は管理権限が重複しますが、この場合には共用部分管理人の権限が優先するとされています。

⑪管理不全共用部分管理命令(新法46条の13及び14、88条)

区分所有者は所在不明ではないものの共用部分の管理が不全である場合に裁判所が管理人を選任して管理を命ずるものです。

基本的に専有部分管理人と同様ですが、管理不全共用部分管理人の場合には原則として区分所有者全員の意見を聞くことになる(新法88条10項、同条3項1号)ため、さらに発令は難しくなります。また、一部共用部分がある場合には別途その共用部分に対する管理不全共用部分管理命令の申立てをする必要があるとされています。

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