レンタカーのNOC(ノン・オペレーション・チャージ)
旅先などでレンタカーを借りる際、本体契約とは別にNOC補償をつけるかどうかを必ず聞かれるかと思います。
レンタカーの利用者が交通事故を起こして車両が損傷した場合、レンタカー会社は修理が終わるまではその車両を利用できないわけですが、その間に発生していたであろう営業利益分がレンタカー会社の損害となります。休車損といわれるものですが、通常、レンタカーを借りる際の契約ではこの休車損を定額で利用者に負担させるものとしつつ、予め1日いくらかの補償料(NOC補償)を支払えばその支払を免れられるという形にしていることがほとんどです。
まず、レンタカー会社は豊富に予備の車両を持っていることが通常ですので、そもそもレンタカー会社に休車損が発生しているのかという問題がありますが、この点を正面から争った裁判例は見つけられませんでした。もっとも、NOCの性質について休車損の立証困難を理由に定額の賠償を契約で定めたものであるとした裁判例(名古屋地判平成29年12月26日交民50巻6号1557頁)があり、これを手がかりにすれば契約を根拠にして認めるということになるのかもしれません。ただその場合には消費者契約法9条との関連で平均的な損害額を超えていないかどうかの問題が別途発生するような気もしますが、この点が争点となっている裁判例はありませんでした。平均的な損害を超えているかの最終的な立証責任は利用者側が負うことになるので、消費者契約法を持ち出してもハードルはそれなりに高いのかもしれません。
もう一つ、事故に関し利用者に全く過失がない場合でも、定額の休車損を負担するのかどうかという点は問題になります。ネットの解説などでは負担する場合ありと説明するものもありますが、各社の貸渡約款などをみると過失がない場合には負担を免れるとしているものがほとんどのように思います。仮に無過失でも負担させるという規定があっても、消費者契約法などから無効とされる可能性が高いのではないでしょうか。ただ、仮に50:50の過失割合のような場合、半分だけ負担させるとはあまりなっていないように思われます。法律上は事故当事者双方のレンタカー会社に対する共同不法行為で連帯責任ということになるのでしょう。
また、少し問題状況は変わりますが、代車としてレンタカーを利用してNOC補償をつけた場合、その支払分は損害として認められない(相手方に請求できない)とされるのが一般的なようです。理由としては任意でつけるものだからとしか述べられていませんが、そうであれば任意保険代(通常レンタカー代に含まれている)も除外されるのではないか、と思ってしまいます。
レンタカーの事故自体が珍しいのかNOCが出てくる件数自体が少なく、裁判上の扱いについてはあまり議論はされていないように感じました。