破産手続開始決定と委任契約
弁護士の業務の一つに破産手続開始の申立代理があります。
文字通り裁判所に破産手続を開始してくださいと申請するものですが、一般的には破産手続を開始するという決定を得たという「入口」で終わらずに、手続が終わって借金返済の義務がなくなったという免責決定を得る「出口」までは代理人としての業務を継続しますし、裁判所も当然そのように扱ってきます。
しかし、民法は委任者(依頼者)が破産手続開始決定を受けたときには委任契約を終了させると定めており、代理人の地位にも同じような規定を設けていますので、理屈の上では入口に入ったところで申立代理人の弁護士はお役御免ともなりそうです。上の民法規定は特約を排除するものではないとされていますので、契約するときに特記事項などを設けていれば問題ないのでしょうが、私の知る限りわざわざそんなことをしている弁護士はいないように思います。私もしてません。裁判所から開始決定後も代理人として振る舞うのなら委任状を取り直せと言われたこともありませんので、当然に出口までつきあうという契約なのだと解釈されているのでしょう。
依頼される方としては当然借金がなくなることを目的としていますので、出口まで業務をすると解釈するのはある種合理的ではあるのですが、一方で明示の特約もないのに法律の規定と違う扱いをしていいのかという点で若干のモヤモヤは残ります。多分全国の裁判所で同じような扱いをしているのでしょうが、どのような解釈に基づいているのかは一度聞いてみたいところです。