無縁墳墓等改葬公告

裁判所から選任されて、相続人がないまま亡くなった方の財産を管理する相続財産管理人という立場になることがあります。選任されて少し経った後で亡くなった方に対する債権があるかどうかを調査するために官報に公告を申し込むことになっているのですが、そうすると掲載官報が見本として送られてきます。


基本的には自分が申し込んだ部分だけ確認してコピーをとって裁判所に報告するだけですが、これの前によく「無縁墳墓等改葬公告」というものが出てきます。私は申請したことはないですが、字面が特徴的で気になっていました。

この公告の根拠は墓地埋葬法施行規則3条で、縁故者のない墳墓又は納骨堂(無縁墳墓等)の改葬許可申請書には、次の①~⑤の書面を添付せよとされています。①墓地管理者作成の埋葬証明書(同規則2条2項1号、3条柱書)、②無縁墳墓等の写真又は位置図(同3条1号)、③死亡者の本籍及び氏名並びに墓地使用者等、死亡者の縁故者及び無縁墳墓等に関する権利を有する者に対し一年以内に申し出るべき旨を、官報に掲載し、かつ、無縁墳墓等の見やすい場所に設置された立札に一年間掲示して、公告し、その期間中にその申出がなかつた旨を記載した書面(3条2号)、④前号に規定する官報の写し及び立札の写真、⑤その他市町村長が特に必要と認める書類。

上記①は寺院の管理する墳墓などであれば問題なさそうですが、誰が管理しているかわからないような共同墓地もあり、その場合はどうするのでしょうか。最終的に許可権者の市町村長が認めればOKのようなので、事前にすりあわせをしておくのでしょう。③は報告書のようです。ただ公告には「死亡者の本籍及び氏名」の記載を要するとありますが、実際の公告だとほとんどが「不詳」になっています。公告の趣旨からするとこれでは意味がなさそうですが、墳墓の所在と名称も公告にあわせて書いてあることが多く、合わせ技一本で特定できるということでしょうか。これも事前に市町村との間で協議をしておくのかもしれません。④も写真自体はそんなに大変ではなさそうに見えますが、公告期間内に立札がずっと立っていたことを示すとなると定期的な撮影が必要になりますので、実際の手間はそれなりにあるでしょう。

ここまででも大変ですが、これは行政的な許可の要件にすぎず、墓石などの所有権についてはまた別途の考慮を要するようです(同旨の通達あり)。理屈としてはそのとおりですが、埋葬者が不詳なら墳墓墓石の所有権がどこにあるかなどわかるはずもありませんから、実際にはエイやで壊していることが多いのかなとは推察します。
これでも法律が変わって簡略化されているそうですが、まだまだ煩雑という印象があります。今後こういう手続はもっと多くなるかもしれません。

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