連絡が取れない区分所有者がいる場合、管理組合はどうするか(2)

区分所有者の相続人全員が相続放棄するか、もともと法定相続人がいない場合には相続人なし(不存在)となります。

その場合、管理組合としては管理費等を請求する相手がいなくなってしまうので、裁判所に相続財産清算人の選任を申し立てることになります。一般的な手続の流れとしては各所の裁判所HPに記載があり、わかりやすいのでそれをご覧いただくのがよいです(名古屋の場合には相続財産清算人の選任 | 名古屋家庭裁判所 )。

よくご質問をいただくのが費用と手続ですので、以下はそれにつき解説します。

【費用】

まず、申立てを弁護士に依頼する場合にはその費用が必要になります。事務所によって異なりますが、実費を除きおおよそ20~30万円くらいかと思われます。なお、滞納管理費では規約に定めがあれば弁護士費用も区分所有者に対して請求が可能とされており、標準管理規約でもそのような規定を置いていますが、相続財産清算人の申立代理費用については現行の標準管理規約に規定はありません。では規約に定めてさえいれば区分所有者(実質は相続財産清算人)に請求ができるのかという問題がありますが、この点につき判断した裁判例はないようです。もっとも、滞納管理費請求の弁護士費用について判断した裁判例などをみると、弁護士費用を「違約金」として請求していることを重視しています。管理費を滞納するのは明らかに区分所有者の責任ですが、相続人がいないのは必ずしも区分所有者の責任ではないことから、こういった費用についてまで「違約金」として区分所有者に負担させるのは酷という判断になるのではないでしょうか。そのように考えると、こういった費用は管理組合が負担せざるを得ないことになりそうです。

また、主に相続財産清算人の報酬に充てるため、申し立てた後、選任の決定が出る前に裁判所に予納金を納める必要があります。これは各県の裁判所によって金額がまちまちですが、愛知県では70万円が標準となっています(これより多くなる場合もあります)。もっとも、マンションの売却などである程度まとまった金額を管理することになれば報酬はそこから出ますので、その場合には手続の終了後に大部分が返金されます。とはいっても手続終了まではかなりの時間を要する(早くて1年、数年かかることもよくあります)ことがほとんどですので、その点はあらかじめ理解しておく必要があります。

【手続】

申立てに当たっては管理組合の出費が必要になりますので、定期総会の機会に決議をするのでなければ臨時総会を開いて申立てに関する決議と予算に関する決議をとることが多いでしょう。いずれも普通決議となります。

通常、相続財産清算人には弁護士が選任されますが、誰を相続財産清算人にするかは裁判所が決めますので、指名などはできません。申立人が管理組合であれば選任後に打ち合わせの機会が設けられるのが通常ですので、もし要望事項などがあればそのときに伝えるのがよいでしょう。ただし、相続財産清算人は申立人の代理人ではありませんので、要望しても必ず聞いてくれるわけではありません。